・インシデントを起こしてしまった。明日からもう仕事に行きたくない
・ミスをして先輩と上司に怒られてしまい、ツラい
・自分ばかりインシデントを起こしている気がする
こんにちは。看護師長のはるです。
医療の仕事をしていると、ミスは本当に怖いですし、できるだけミスを防がなくてはいけません。
しかし人が働くうえで、ミスを完全になくすことは不可能です。
長年はたらく看護師で、ミスをしたことがない人は一人もいません。
ミスをしてもそのことを次に活かして成長するために、しっかり振り返って反省したら、そのあとは元気に前向きに立ち直ることが大切です。
わたしは師長として看護師のインシデント対応を毎日していますが、大きなインシデント・アクシデントを起こしてしまったスタッフが、とても傷ついてツラい思いを抱える姿を見るのが本当につらいです。
インシデントは個人の責任ではありません。組織として事故が起きない仕組みを作ることが必要なのです。
インシデントを起こしてしまった看護師が、思い詰めてしまわないように。
落ち込んでしまったときの立ち直る方法を紹介します。ぜひ最後まで読んでみてください。
これ以外にも、看護師をしていて仕事がツラいと感じる場面について、対処法をまとめました>>【まとめ記事】看護師の仕事がつらいと思った時に読んでほしい
参考にしてみてください。
看護師に多いインシデントはどんなもの
患者の名前を間違える
患者誤認です。
これは、仕事を始めたばかりの人も、慣れてきた人も、ベテランさんでも起こしてしまうミスです。
・食事の配膳で、同じ部屋の隣の人と間違えて配ってしまった
・同じ名字の別の患者の薬を渡してしまった
・検査の呼び出し時に名字だけで確認してしまい、別の検査の場所に案内してしまった
こういうインシデントの経験はありませんか?
コロナ禍の今は家族面会が制限されているため、洗濯物を届けに来た家族から預かる際に、患者間違いを起こすケースも増えています。
患者や家族は、看護師に自分の名前が呼ばれるのを待っています。
そのため、現れた看護師が別の患者の名前を呼んでいても「自分が呼ばれた」と思い込んでしまい、「はい」と返事をしてしまうのです。
そのため医療の世界では、こちらが名前を呼んで返事をしてもらうのではなく、患者本人に名乗ってもらうことが推奨されています。
食事を配る時、薬を渡すとき、検査に案内するときなど、患者の名前を確認する場面は多いです。
「確認しますので、お名前を教えていただけますか?」と声をかけて確認する習慣をつけましょう。
情報の把握もれ
・10時に血糖測定の検査があったが、そのことを把握できていなくて検査できなかった
・毎週火曜日に、朝食前の体重測定の指示があったが、指示に気付かず測定し忘れてしまった
・今日から点滴の投与速度が変更になっていたが、気付かず昨日までと同じ速度で投与してしまっていた
この種類のインシデントが、一番多いのではないでしょうか。
入院患者は何十人もいて、毎日何人も退院して入院して、患者が入れ替わっていきます。
薬や点滴の指示、検査や安静度の指示など、様々な指示が毎日変更になり、追加になります。
それらを確認しながら、一つ一つ実施していくのが看護師の仕事です。
朝の仕事開始時にすべての指示を確認しますが、その後もどんどん指示が出続けますし、変更にもなります。
電子カルテのため、医師は医局にいて、カルテ内の指示だけ書き換えられていることもあります。
こういった状況下で、すべての患者の指示を漏れなく、間違いなく、実施していくことは簡単なことではありません。
そういう高度な知識や広い視野、柔軟な対応力が求められる仕事なのです。
コミュニケーションエラー
・造影検査のための点滴ルートが分からず検査科に尋ねたら「普通の(造影剤用の)でいいです」と言われ、看護師は「普通の(造影剤用ではない)ですね」と確認。ルートを変えずに検査に案内したがルート間違いで検査が実施できなかった
・急な薬の変更があり、リーダーから部屋持ち看護師へ「それで大丈夫よ」と手渡された。リーダーは、手渡した後は部屋持ちが通常通りに確認手順をおこなうと思っていた。部屋持ちは「大丈夫」と言われたので確認手順が終わっていると勘違いしてしまい、確認がされないまま患者に渡されてしまった。
コミュニケーションエラーは、思い込みのエラーです。
人はみんな、自分の都合のいいように受け取るものです。
何かインシデントが起きたときに関係したスタッフから丁寧に話を聞いていくと、誰かの勘違いがきっかけになっていることが多いです。
人に何かを指示する場合や、指示を受ける場合は、相手が誤解しないようにメモに書くなどして手渡しましょう。
医師からの口頭指示は、かならず口頭指示用のメモ用紙に書く。
電話で検査呼び出しを受けたら、その場でメモを取って部屋持ちに渡す。
急な指示変更は、一緒にカルテを見て確認し、どこまで実施したかをきちんと相互に確認する。
それだけでもインシデントを減らすことができるはずです。
インシデントを起こした後の正しい対応
すぐに報告
インシデントの発生に気付いたら、すぐに報告が必要です。
まずは患者の安全を確保し、その場から離れても大丈夫かどうかを判断しましょう。
患者の容体に変化がある場合はその場から離れず、スタッフコールで人を呼んで対応することが最優先です。
患者の安全に問題がなければ、すぐに指導者やリーダーに報告をしてください。
主治医へすぐに報告が必要か、何か対処を先にすべきかなどをリーダーに判断してもらい、指示を受けて動いてください。
隠さない、嘘をつかない
インシデントを起こしてしまったときは、とても怖いですよね
自分のミスを自分で発見した時、このまま黙っていれば誰にもバレないんじゃないかと思うかもしれません。
でも絶対に隠さないこと、嘘をつかないことが、看護師としての倫理観です。
何のために看護師になったのか、考えましょう。一生自分のミスを隠したままで看護師を続けていくのはツラいです。
私は看護師長として働く中で、ミスを隠そうとしてバレてしまった若い看護師を何人も見たことがあります。
・カルテに血糖値が記載されてなかったが、指摘すると「測ったけど書き忘れた」と答えた新人さん。しかし先輩が測定器の履歴を見ると、値が記録されておらず、測定忘れを隠していたことが発覚しました。
・ラウンドから帰ってくるのが早かった看護師に環境整備の実施を尋ねると「やってます」と返答。しかし環境整備用のワゴンが修理のために変更になっていることを知らず、実施していなかったことが発覚しました。
看護師は集団で一緒の仕事を分け合って働いています。そのため、いつも誰かが他の人の仕事ぶりを見ています。
おなじ道具を使いまわすので、前の人がどう使ったのかが分かりますし、使用されていないことにも気づきます。
万が一、嘘をついたことがばれてしまったときには、取り返しがつかなくなることを自覚しましょう。
医療の仕事は信頼が何より大切です
ウソをつくような人に、自分の命を預けられるでしょうか?
大切な家族の看護を任せられるでしょうか?
うそをついたり隠したりせず、正直にインシデントの報告をして対策を立てる誠実な看護師でいてほしいと思います。
原因の分析
なぜインシデントになってしまったのか、しっかりと原因を分析しましょう。
・いつもは確認しているけど、忙しくてうっかりしました
・処置と入院受け入れが重なって焦っていたので確認がきちんとできませんでしたが、いつもはやっています
このような分析だけでは、今後も忙しい時にインシデントを起こしてしまいますよ!
『忙しい時に、なぜ確認をしなかったのか』『なぜ確認していないことに気付かなかったのか?』ということをしっかりと思いだしましょう。
カルテを確認をしたかどうかが分かるような工夫をしているでしょうか?
忙しい時にはできないような、手間のかかる確認方法をしているのでしょうか?
こういう分析をきちんと行うことが、対策を立てる上で重要です。
繰り返さないための工夫をする
同じようなインシデントを起こさないために、対策を立てましょう。
原因の分析から、すぐに立てられる対策があれば実施しましょう。
その他にも、いつもの自分の行動でミスにつながる可能性がある行動がなかったか振り返り、行動を変えていきましょう。
ミスを繰り返さない方法については>>【看護師】同じミスを繰り返さない5つの方法で解説していますので、参考にしてください。
落ち込んだ気持ちから立ち直る方法
ツラい気持ちを先輩や同期に聞いてもらう
自分の中にため込まず、ツラい気持ちを誰かに話しましょう。
プリセプターや信頼している先輩、仲の良い同期などは親身に聞いてくるはずです。
それぞれみんながインシデントを経験しているので、その時の体験を話してくれる人もいるかもしれません。
家族に医療関係者がいるなら、家族に聞いてもらうのもいいでしょう。
特に女性は、自分の悩みを人に話すことで気持ちが安定したり、ストレスの解消になる心理的な特徴があります。
『話したところで解決にならない』などと諦めず、できるだけツラい気持ちを話して、共感してもらいましょう。
自分を責めない
インシデントを起こしてしまったことで、自分を責めないようにしましょう。
人は必ずミスをします。やらないといけない手順をうっかり忘れることも、仕方のないことです。
そのことで『自分は看護師に向いていない』『能力が足りない』などと思わなくて大丈夫です。
インシデントは個人の責任ではありません。
《人は必ずミスをする》それを織り込んだうえで事故にならないように、何重ものチェックをしたり形状や色を変えてミスを防ぐ工夫がされているのです。
今回はたまたま自分がミスをしたけど、同じミスは誰でもあり得る
この考えで、レポートを提出してみんなで事故内容を共有して、再発防止に取り組んでいるのです。
同じミスを繰り返さなければいいのです。
自分を責めすぎないようにしてくださいね。
体を動かす、ぐっすり寝る
わたしは落ち込んだ時、大きな音で音楽をかけながら家中の掃除をします。そして早めに寝てしまいます。
体を動かすと脳内のセロトニンが活性化して気持ちが落ち着くし、軽い運動はストレス発散にも効果的です。
好きな音楽を大きな音で流しながら、お風呂掃除やトイレ掃除、キッチンのシンクを磨いたり、コンロも磨いたり。
家がきれいになって気持ちがいいですし、体が疲れるのも心地よい。
何より無心で磨いている間は思い悩まなくていいので、疲れ切っていた心の元気が回復するんです。
運動が習慣づいている方なら、もっとハードな筋トレなども効果的です。
ハードな運動は男性ホルモンが優位になって自尊心の向上に役立つそうです。
筋トレはうつ症状の改善に役立つという研修結果もありますよね。
体を動かして気分を変え、疲れてぐっすり眠ってしまえば、少し気持ちがスッキリしますよ。
自分のしたことを振り返ってきちんと理解し、次に活かす
ミスを繰り返さないために、原因の分析が大切です。
ミスをしてしまった事実はツラいでしょうが、目をそらさずに自分のしたことを振り返りましょう。
その時に何を考えていたか
いつもと何が違ったか
同じような状況があれば、また繰り返してしまうのか
しっかりと振り返って分析をして、次の活かす必要があります。
落ち込んでしまってじっとしていても、気持ちは前を向きません。
まずは部屋の片づけや散歩などで体を動かして気持ちを切り替え、そこからミスを次に活かすための振り返りをしましょう。
自分の目標を思い出そう
落ち込んでしまって、気持ちが前を向けないときは、自分の目標を思い出してみましょう。
なぜ看護師になったのですか?
どんな看護師になりたいですか?
職場にあこがれの先輩看護師はいますか?
別の職場でも、空想でも構いません。目指している理想の看護師を思い浮かべてください。
目標って、普段は意識しないので忘れていることが多いです。
こうしてときどき思い出すことで、自分が目指している方向を確認して、修正することが大切です。
目先の出来事に囚われていたのが、視線が上がって未来を見られるようになるからです。
まとめ
インシデントで落ち込んでしまったときの立ち直る方法について紹介しました。
看護師として働くうえで、ミスを完全になくすことは不可能です。
しかしミスが直接事故につながらないように工夫して、患者への影響を減らすことはできます。
自分のミスをしっかり振り返り、効果的な対策を立てて、次に活かすことができればいいのです。
自分を責めたり、落ち込みすぎたりせず、上手に気分転換をしましょう。
この記事が、ミスをしてツラい思いをしている看護師の皆さんの役に立てばうれしいです。
これ以外にも、リーダー業務の大変さや、怒る医者への対応の難しさ、怖い先輩への対処法などをまとめています>>【まとめ記事】看護師の仕事がつらいと思った時に読んでほしい
参考にしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。