● 看護補助者ってどういう資格なのか知らない
● お願いしたらダメな仕事なんてあるの?
● 看護師が教えれば何でもお願いできるんじゃないの?
こんにちは、はるです。
私は地方病院で看護師長をしています。
今回は病棟で働く看護補助者さんについて解説します!
あなたの働く病棟には、看護補助者さんが働いていますか?
看護補助者さんを病棟に配置して条件をクリアすると、そのことが評価されて診療報酬に加算がつくようになっているので、最近では多くの病棟に看護補助者さんがいますよね。
日々、看護補助者さんと一緒に働いていると思いますが、そんなあなたに質問です。
病棟の中で患者さんのケアをするとき、『看護師がやらないといけない業務』と『補助者さんにやってもらってもいい業務』の区別がついていますか?
自分でやるか、お願いするかは、忙しさで何となく決めています
お願いしたらダメな仕事もあるんですか?
看護師と看護補助者は職種が違うので、仕事内容も違います。
そこを理解しておかないと、『うっかり何でもお願いしていたら、ガイドライン違反になっていた!』なんてことになったら大変です。
詳しく具体的に解説するので、ここで確認して、トラブルを回避してくださいね。
それ以外にも、きちんとお願いできる仕事の範囲を分かっていれば、『意外とこういうこともお願いできるんだ!』と発見して、看護師の業務負担軽減につなげられるかもしれませんよ。
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看護補助者ってどういう職種なの?
そもそも『看護補助者』っという言葉の定義をご存じですか?
看護師のアシスタントのような仕事ですよね?
定義があるんですか?
看護補助者という言葉の定義や仕事内容、法的な位置づけについては日本看護協会がガイドラインを出しています。
本ガイドラインにおいて看護補助者とは、「看護が提供される場において、看護チーム の一員として看護師の指示のもと、看護の専門的判断を要しない看護補助業務(『傷病者 若しくはじよく婦に対する療養上の世話』及び『診療の補助』に該当しない業務)を行う 者」とする。
2021年度改訂版 看護チームにおける看護師・准看護師および看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド
つまり、看護師の指示で仕事をする人。
それも看護の専門的な判断が必要じゃない仕事に限るということです
看護師の仕事内容は、『保健師助産師看護師法』という法律やいくつかの法令などで決められています。
看護師の仕事は『業務独占』といって、看護師以外の人がこの業務をすることができないんです。
なので、看護師の仕事なのか看護補助者の仕事なのか、法令に沿って役割の違いを確認しておかないと、法令違反!となってしまう恐れがあるんです。
【看護師の定義】
第5条:この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話または診療の補助を行うことを生業とするものをいう
【業務独占】
第31条:看護師でないものは、第5条に規定する業をしてはならない。ただし医師法または歯科医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
保健師助産師看護師法
看護補助者っていう資格があるんですか?
特別な免許や資格は必要ありませんよ
看護補助者になるために、特別な資格は必要ありません。
ただし仕事内容は介護と共通する部分も多いので、介護関係の資格や経験は役に立ちます。
特に介護福祉士やホームヘルパーの資格を持っていたり、介護職員初任者研修などの研修を受けている人は職場でも活躍していますね。
介護福祉士として長年働いていた人もいれば、はじめて介護系の仕事に就く無資格の人もいるので、『看護補助者』といってもそれぞれ現場で教えることやお願いできる仕事の範囲も変わります。
どの仕事でも同じですが、個人個人の能力や経験に応じて仕事範囲を決める必要もありますよね。
看護補助者の役割は?
次に、看護補助者さんの仕事内容について解説しますね。
看護師のように、法律で決められているの?
いいえ。
看護補助者の仕事を定めた法律はありません
どんな仕事をお願いしたらいいのか、先ほどのガイドラインでは次のように説明しています。
厚生労働省通知においては、看護補助者は「看護師長及び看護職員の指導の下に、原則として療養生活上の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)、病室内の環境整備やベッドメーキングの他、病棟内において、看護用品及び消耗品の整理整頓、看護職員が行う書類・伝票の整理及び作成の代行、診療録の準備等の業務を行うこととする」とされている。これらは診療報酬の基本診療料の算定に関する内容であるが、入院基本料を算定していない場合であっても、看護補助者の業務内容及び業務範囲を考える際には有用である。
2021年度改訂版 看護チームにおける看護師・准看護師および看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド
つまり『看護師の指導を受けながら、生活上のお世話や環境整備、物品の補充、伝票整理などをする』ということです。
具体的にどんな仕事があるか、考えてみましょう。
・食事の介助、お風呂の介助、トイレの介助
・洗面や着替えの介助
・移動の介助
・病室の掃除やシーツの交換
・業務に使う消耗品の整理整頓
・カルテや書類の整理、書類作成のお手伝い
こういう、患者さんの生活する上でのお世話が仕事の中心です。
基本的には全部、看護師の指導のもので行う決まりになっています。
看護補助者ができる仕事とできない仕事
看護補助者が行なうのは『療養生活上の世話』です。
言葉がほとんど同じですが、『療養上の世話』は看護師が業務独占しているので、看護補助者はできません。
『療養上の世話』と
『療養生活上の世話』って
ほとんど同じじゃない?
言葉がよく似ているけど、この違いが大事なの!
ここが分かっていないと、看護師が責任を負うことになるのよ
看護補助者さんにお願いする仕事が、看護師にしかできない『療養上の世話』かどうかは、お願いする看護師自身が判断する必要があります。
その業務が看護補助者さんにお願いできるかどうかは、業務の内容だけじゃなくて、患者さんの状態によって決まるのです。
例えば、以下のようなケースです。
状態が安定した患者さんの全身清拭=『療養生活上の世話』
体位変換で血圧が変動する患者の全身清拭=『療養上の世話』
どのくらい動かせるかは看護師の専門的な判断が必要だからね!
こういう判断は、なんとなく想像がつきますよね。
『この患者さんのケアを補助者さんに任せても大丈夫かな?』というアセスメントをしてから任せる必要があるんです。
病棟で起こりそうな事例|その仕事は任せて大丈夫?
看護補助者さんにお願いできる仕事とできない仕事の違いは分かりましたか?
ここからは、具体的にどんな場合に注意する必要があるかを紹介します。
2年目看護師のC子さんは、片マヒのある患者さんを食堂まで案内するように補助者に依頼した。
依頼された補助者は患者と一緒に食堂まで歩いていたが、患者は廊下の曲がり角でバランスを崩して転倒した。
補助者はとっさに対応できず、転倒する患者を支えられなかった。
この場合、看護師のC子さんはどんなアセスメントが必要だったのでしょうか。
・患者さんの歩行状態は安定しているか、ふらつきがないか
・補助者さんは患者さんのマヒの状況を理解しているか
・補助者にマヒ側に立って付き添うように指示をするか、マヒ側の脇の下を支えるような介助を指示する必要があるか
看護師のC子さんがこういうアセスメントをして、補助者に適切な指示を出していなければいけません。
この患者さんは転倒リスクが高いから、看護師が歩行介助をした方がよかったかも・・・
忙しいとつい補助者さんに頼んでしまうことがありますよね
だけど丁寧な説明や指示をしなければ、事故になる恐れがありますよ!
仕事をお願いできるかどうかの判断と、その仕事の注意点を指示するのは看護師の役目です。
忙しいからと言って何でもお願いしてしまったり、きちんと指導や説明をせずに仕事をさせるのは危険です。気をつけてくださいね。
まとめ
今回は、病棟で働く看護補助者さんの仕事内容について解説しました。
日本看護協会のガイドラインによると、看護補助者とは「看護が提供される場において、看護チーム の一員として看護師の指示のもと、看護の専門的判断を要しない看護補助業務(『傷病者 若しくはじよく婦に対する療養上の世話』及び『診療の補助』に該当しない業務)を行う 者」と定義されています。
看護補助者になるために、特別な資格は必要ありません。
仕事の内容は、『看護師の指導を受けながら、生活上のお世話や環境整備、物品の補充、伝票整理などをする』ことです。
看護補助者が行なうのは『療養生活上の世話』です。
言葉がほとんど同じですが、『療養上の世話』は看護師が業務独占しているので、看護補助者はできません。
看護補助者さんにお願いする仕事が、看護師にしかできない『療養上の世話』かどうかは、お願いする看護師自身が判断する必要があります。
その業務が看護補助者さんにお願いできるかどうかは、業務の内容だけじゃなくて、患者さんの状態によって決まります。
看護師は常に『この患者さんのケアを補助者さんに任せても大丈夫かな?』というアセスメントをしてから任せる必要があるんです。
看護師に求められる役割は適切な医療だけではなく、医療安全や感染予防、快適な療養生活、充分な説明など、どんどんと業務量が増える傾向にあります。
看護師の負担軽減のためにも、看護補助者さんにお願いできる仕事内容をしっかり把握して、最大限に活用していきたいですよね。この記事が、看護師の負担軽減に少しでも役に立てたらうれしいです。
他にも>>【看護師の悩み】仕事がつらいと思った時に読んでほしいの記事に、看護師の悩みについていろいろまとめているので、興味があれば読んでみてください。