● 師長さんって忙しそうだけど、どんな仕事をしているの?
● 長く仕事を続けたいけど、管理職になるのは不安
● 師長はなんで現場の仕事をしないでずっとパソコンの前に座っているの?
こんにちは。看護師長のはるです。
師長歴は9年くらいで、慢性期と急性期の病棟師長を経験しています。
今回は師長の仕事についてご紹介します!
みなさんは、『師長さん、いつもバタバタしているけど、何の仕事をしているんだろう?』と疑問に思ったことはありませんか?
私自身も、師長になるまでは知らなかった仕事がたくさんあります。
人手不足で忙しいのに、師長さんは座ってばかり。
いつもどんな仕事をしているの?
今回は私の経験のなかから、『看護師長の仕事の一例』を紹介したいと思います!
看護師長とは
まずは、看護師長とは病院の中でどのような立場なのかを説明します。
師長さんは、病棟で一番エラい人でしょ!
師長は、看護部長とスタッフとの間に挟まれる中間管理職なのよ
たしかに、自分の部署での意思決定では『最高責任者』です。
しかし院内全体でみれば、看護部長から部署を一つ任されているだけの『中間管理職』のポジションでもあります。
そのため、他の部署にも影響するような内容であれば、師長同士の話し合いや看護部長への相談が必要になります。
看護師長が1人で判断して決められるような内容は、意外と少ないのです。
師長の仕事内容
看護師長の仕事内容について、代表的なものをご紹介します。
基本的には、部署に関することはすべて師長の仕事です。
ベッドコントロール
入院患者を受け入れている病院であれば、これが師長の代表的な仕事になります。
入院が必要な人をただ受け入れて、病気が治った人を退院させるだけでは、ベッドの数が足りなくなったり余ったりして、安定的に運営できませんよね。
院内全体でベッドの空き状況を把握して、患者さんにとってより良い病棟に移ってもらったり、適切な時期に退院できるように調整したりして、ベッドの空き状況をコントロールするのです。
自分の部署の看護必要度やベッド稼働率を毎日チェックして、入退院の患者数を調整します。
入院が必要な患者さんを断ることがないように、院内転棟の調整をして空きベッドを確保することも重要です。
病棟の中でも、患者さんの部屋移動をしますよね
病棟内でも患者さんの体調に応じてベッドの位置を変更しますが、それらの調整もベッドコントロールのひとつです。
満床に近いときはベッドコントロールが難しく、午前中の数時間を使ってしまうこともあります…
スタッフを管理して看護の質を保つ
患者さんへ提供する看護の質を保つためには、しっかりとしたスタッフ管理が必要です。
スタッフが働きにくいところは?
みんなルール通りに実行している?
能力と仕事内容はつりあっているかな?
スタッフの記録内容をチェックして、必要な看護がきちんとできているかを確認します。
記録物はたくさんあるので、バイタルサインや状態の記録だけではなく、褥瘡の評価や看護必要度の入力、カンファレンスの内容や看護計画の評価などもチェックし、必要であれば指導します。
他にも、体調が悪いのに無理をして働いているスタッフがいないか、面倒だからと決められたルールを守らずに仕事をしていないかなど、いろいろな事に気を配ります。
スタッフの体調やメンタルのフォロー、モチベーション維持のための声かけや適切な役割の割り当てなどを、日ごろから細かくおこなうのです。
無理のない勤務表づくりも、スタッフ管理のひとつです。
勤務表づくりに関しては、こちらの記事『勤務表の不公平をなくす』で詳しく説明していますので、気になる人は読んでみてください。
たとえば、スタッフ同士の人間関係の調整も、仕事の上で必要な範囲であれば、介入して調整する場合もあります。
スタッフ同士や患者同士のトラブルは意外と多く、その人間関係の調整に午後の業務時間をすべて使ってしまうこともあります…
人が集まって仕事をしているわけですから、人間関係の調整はどうしても必要になりますよね。
スタッフの教育・人材育成
先ほどのスタッフ管理と似ていますが、スタッフの知識や技術を向上させるための教育も、師長に求められます。
新人や中途採用者に仕事のルールを教える入職時の指導や、看護学生の指導などは、多くの病院で行われていますよね。
指導をするのは、教育委員さんのお仕事でしょう?
師長さんの仕事なんですか?
だれに指導を任せるか、どんな内容で指導するかは師長が決めています
実際に指導するのは担当の看護師ですが、師長はその監督責任があるのです。
他にも、院内外の研修への参加をうながしたり、主任やリーダーに管理職教育をすることも必要です。
スタッフそれぞれのレベルに合わせた課題を与えて教育する必要がありますし、興味のある分野を伸ばしてあげるだけではなく、部署に必要な専門的な知識を持った人材を増やす計画も考えて、教育していますよ
事故やトラブルを防止・トラブルの対処
トラブル対処は時間もかかりますし、精神的にも消耗します。
できるだけトラブルを防止するように、必死になるのはそのためです。
投薬ミスや患者間違いなど、医療ミスを防ぐために様々な工夫をしています。
医療安全のマニュアルを守った方法で仕事をしているか、スタッフの働き方に目を光らせているのも、その一つです。
他にも、感染対策や褥瘡予防のためのマニュアルがあり、看護師の働き方に関するルールはたくさんあります。
面倒な手順やのものや、日ごろあまりやらない手技のルールもあるため、目を光らせておかないとルールが形骸化してしまうかもしれません。
それと、実際に発生した医療事故や危なかった事例などのレポートをチェックし、事故防止のための対策を考えます。
どれだけ気を付けてもミスはなくならないので、週に数回はトラブル対処をしていますね
避けようのない設備上のトラブルや、患者のトラブルなど、看護師が対策しようのないものも多いです。
それらの対処をし、報告書を書き、看護部長や事務長に報告したり、患者家族に連絡したりすることまでが師長の仕事になります。
資材や物の管理
病棟にはたくさんの物品があります。
それらを把握し、管理することも師長の責任範囲です。
病棟の中の物品って、たくさんありますよね。
把握するだけで大変そう・・・
ガーゼや包帯などの消耗品だけではなく、心電図モニターなどの医療機器、車いすなどの器材、ホワイトボードやプリンターなどの事務用品、パソコンやタブレットなどの電子機器。
ほかにも、酸素の配管や浴室・トイレなどの設備、病室の床頭台やカーテンなど、全ての物について、点検して安全に清潔に使用できるように保つ必要があるのです。
それぞれ担当者を決めて、定期的にチェックや清掃をしてもらっています
管理をするだけではなく、コスト削減のための取り組みをしたり、器材の買い替えや新規購入の起案を出したりするのも、師長の仕事です。
他部署や他職種との調整・交渉
病院ではいろいろな職種の人が働いていて、患者の治療のためには連携が必要です。
そのため、看護部以外の部署と協力し合うための話し合いや、病棟内で働く看護師以外の職種(医師、リハビリスタッフ、栄養士、薬剤師など)との仕事内容の調整や交渉も、師長の仕事になります。
職種が違うとはいえ、仕事内容に重なる部分も多いため、どちらがどこまでの範囲で業務をするのかなどは、話し合いで決められます。
誰かがやらないといけないけど、専門的な内容以外で業務が増えるのは困る。どこまでが看護師でないとできない仕事なのかを見極めて、交渉する必要があります!
こういう交渉によってルールが決まりますし、状況が変わればルールもどんどん変わります。
それらのルールをスタッフにお知らせして、全員に周知することも、師長の大切な仕事です。
師長の仕事【一日の流れ】
病棟師長の一日の仕事の流れをご紹介します。
8:30 朝礼 申し送り 夜間の情報収集
始業時間に朝礼をして、伝達事項などを周知しています。
夜間帯の出来事の情報収集をして、夜勤者の申し送りを受けます。
8:45 ベッドコントロール
当日の入退院患者を確認し、重症者や要注意者の状態も考えて、病棟内でのベッドコントロールをします。
予約の入院だけではなく、緊急入院に対応できるようにベッドを準備しておきますし、さらに明日以降の入退院の予定も考えて、コントロールします。
病棟内だけでコントロールせず、患者の状態にあった専門病棟への移動なども検討します。
9:30 管理ミーティング
各病棟管理者、ベッドコントロール師長、看護部長が集まって、看護部の管理ミーティングをおこないます。
院内全体の空床数を把握したり、病棟間でのベッドコントロールの打ち合わせをします。
またICU/HCUの転入出を決めたり、各病棟の要注意患者について情報共有したりします。
また必要であれば、多忙な部署にスタッフを応援派遣したり、新人を処置見学に行かせる調整もしています。
その他、連絡事項や共有事項の確認や伝達をして終了です。
10:00 病棟ラウンド
病棟内をラウンドして患者に声をかけたり、病棟内の様子をチェックします。
このとき、カルテの情報収集から気になった方の様子を見たり、話を聞きます。
それと同時に各病室の清掃状況や設備の不備がないかなども、簡単にチェックしています。
このラウンドは、15分くらいで終わる時もありますが、2時間かかってしまって昼食が配膳されるまで患者さんとお話していることもありますね。
とくに苦情をお聞きする時などは長くなるため、午前中いっぱいを使うつもりでお部屋に伺っています。
10:30 カルテ記録、看護必要度、レポートなどのチェック
前の日の記録内容の確認や、提出されたレポートのチェックをします。
とくに入院当日や手術日、状態に大きな変化があった患者の記録は丁寧に確認し、必要であればスタッフに確認や指導をします。
私が休みの日には主任が管理代行としてチェックしてくれていますので、基本的には前日の記録のチェックの実をしています。
12:00 休憩
師長の休憩時間に決まりはないため、会議の時間や患者さんとの約束の時間などによって、休憩時間は変わります。
病棟内に師長室として個室があるため、他のスタッフとずらして休憩する必要がないので助かっています。
パソコンで仕事をしながら食べることも多いですね。
13:00 会議、カンファレンス
この時間帯は、会議やカンファレンスが行なわれる日が多いです。
同日に3つの会議が連続する日もあり、その日の午後は会議に出るだけで業務時間が終わるため、病棟業務は何もできずに終わってしまいます。
逆に会議がない日もあるので、仕事の進み具合をうまくコントロールする能力が大切です。
15:00 会議資料作り、面談、勤務作成、提出物チェックなど
会議のない時間帯は、いろいろな事務仕事をしています。
師長の仕事には事務仕事が多くあり、報告書を書いたり、起案書を書いたり、会議の資料を作ったり、スタッフからの提出物にコメント書くことなども求められます。
また、病棟の年間目標や月間目標に対する評価をするためにデータをまとめたり、スタッフへの周知のためにスライド資料を作って電子カルテのオンラインツールに掲載することもあります。
16:00 スタッフの残務量チェック、申し送り準備の確認
就業時間間近になると、残っている業務量を確認してリーダーへ仕事の振り分けを指示したり、薬剤の定数チェックや救急カートチェック、翌日の請求などが実施されているか確認をします。
当日の退院処理や翌日の入院準備、翌日の検査や手術の準備についても、もれなくできているか確認をします。
17:00 終礼
終礼をして、業務終了です。
重要な伝達事項があれば、ここでもう一度スタッフに伝えます。
師長が参加する会議の一例
ここからは、師長が参加する会議についてご紹介します。
どのような会議があるかというのは、病院によって違います。
そのためここでは、ある程度の規模の病院であれば開催されているであろう、一般的な会議を中心にご紹介しますね。
いろいろな会議に出席している、ということを知ってほしいです
会議に出席するということは、出席前の資料の準備やデータの整理が必要です。
さらに、出席した後は宿題のように課題が出されたり、会議で決まった内容の周知や実行のために、さらに仕事が増えてしまうのです。
看護師長会議
院内の師長が集まって開催する会議です。
毎月1回程度、開催されます。
話し合う内容は、情報の共有や問題点の話し合い、管理職者研修として勉強会を行う場合もあります。
この場では、日ごろの業務上の問題点について病棟師長同士で交渉をしたり、人事異動の調整をすることもあります。
交渉や調整って、難しそうですね・・・
そういう時は、ピリピリした雰囲気になることもありますね・・・
だからこそ、日ごろのコミュニケーションが大切なんです。
ベッドコントロール会議
ベッドコントロール師長や病棟管理者が集まって開催します。
医療ソーシャルワーカーが参加することもあります。
院内のベッドの空き状況を共有したり、患者の病棟異動を調整したりする会議です。
当日~数日先までの入院患者のベッドを確保することと、患者の病状に合った病棟に異動できるように調整します。
うちの病棟ばっかりに、入院が入って大変・・・
入退院が一つの部署ばかりに偏らないように調整することもあります。
経営会議や業務報告会議
院内全体の管理者が集まる会議です。
月に一回程度、開催されます。
ここでは、各部署のベッド稼働率や診療科ごとの売り上げ、救急受け入れ数や手術件数、コストや人件費などが報告され、それぞれの状況や問題点について確認をします。
病棟の看護必要度やベッド稼働率、コストの数字にドキドキしています
余りにも数字が悪くなっていると、事務長や院長から直接事情を聞かれることもあるので、緊張します。
他にも、情報共有や監査に向けた指示、今後の方向性に関してなど、さまざまな内容が議題に上がります。
看護部会議
これは、私の働いている病院では、看護部長・すべての師長・看護部委員会の委員長・看護主任が集まる会議です。
人数が多いので、広い会議室を使って2カ月に1回、行われます。
ここでは主に情報共有と課題の確認が行われます。
新人看護師の教育状況や、褥瘡発生率、感染に関する報告など、各委員会から報告と問題提起がされて、それを話し合います。
この会議は、看護部内の問題点を具体的に話し合うことができるので、とても有意義な時間です。
ただ議論が熱くなりすぎて2時間くらいかかることもあります・・・
委員会定例会
委員会の会議は毎月行われますが、師長になると複数の委員会に所属しているため、参加する会議数が多くなってしまいます。
自分が委員長を務める看護部委員会が1~2つあります。
わたしは一時期、4つの委員会で委員長をしていたことがあります
ほかにも、病院長や事務長が委員長を務めるような院内委員会に、看護部の代表として参加するものもあります。
師長であれば、少なくとも3~5つくらいの委員会には所属していることが多いでしょう。
それぞれの委員会で役割があり、その業務内容は増える一方です。
看護師の委員会については、こちらの記事で種類や役割をまとめていますので、興味がある方は参考にしてください。
まとめ
今回は、看護師長の仕事内容について、皆さんにご紹介しました。
若手の看護師の皆さんは、「師長さんっていつもパソコンに向かっているばかりでどんな仕事をしているの?」と疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。
そういう方に、看護師長の業務内容や忙しさの理由を知ってもらえるきっかけになれば嬉しいです。
部署を安定して運営するための下準備や情報収集は、毎日継続的にする必要があり、減ることもなくなることもありません。
スタッフが忙しく働いていても、それぞれが指示通りに仕事を進めているか、問題は起きていないのかというチェックも毎日必要です。
さらに、たくさんの会議へに出席するための準備や、合間にクレーム対応・トラブル対応などのイレギュラーな仕事もあります。
現場で患者さんの看護をする仕事とは違いますが、部署を安定的に運営して看護師の皆さんが看護に集中できる環境を作るためには、必要な役割なのです。
看護師を長く続ける中で、もしチャンスがあればぜひ管理職の仕事にもチャレンジしてもらいたいと思います。
これまでとは違う看護師の仕事を体験できますし、視野が広がって病院の経営やマネジメントを学ぶ機会となるでしょう。
自分では知らなかった管理職の面白さややりがいを見つけるきっかけになるかもしれませんよ。
他にも、スキルアップに興味がある方はこちらの記事も参考にしてください。